沈黙だけが生き残る・敵フラッグ強襲戦
2009/11/22


福生N橋フィールド 2009年11月22日
参加人数20名
筆・紅中兵

この日、いつもなら30人を下らない参加者のいるN橋フィールドは、暑さもあってか全体で20名と普段の半分程度の参加者であった。
人数の多寡は時の運であるが、この日我々から見て敵側に相当するグループは、どうも展開が遅いというか不活性というか、何か人数だけではない手ごたえの無さを怪訝に感じさせるに十分な何かがあった。

ゲームが何回か進み、私がたまたま早々に味方の流れ弾で戦死してセーフティで様子を見ていた時、その理由が判明した。
敵のフラッグ前がやけに賑やかである。数えてみたところ、何と7人が的フラッグ前及びその周辺に点在していた。
大半は知り合いなのか、大声でゲームとは全く関係ないバカ話などしている。
また、スナイパーと思しき奴は、ボルトアクションライフルで敵とは全く関係ない鉄柱を手慰みに撃っている。
戦線後方にこれだけ遊兵がいたら、そりゃあ前線は兵力不足をきたしてしまうのも無理は無い。
それと同時に、ゲーム中であるにも関わらずゲーム進行はどうでも良いの体でおしゃべりを延々と繰り返してるその態度はどうなのか、とも思った。
そんな姿勢では、サバゲに参加してる意味が無いではないか。

この舐めきった態度に、正義の鉄槌を下したくなった私は、ゲーム間の休憩時を待って同志達にこの趣旨を伝えた。
友軍の展開が遅ければたった一人でも前線を支え、メインウエポンが使えなければNew銀ダンを手に躊躇無く戦いを継続する我が同志達は勿論二つ返事で賛同してくれた。

「面白い。ゲーム中にたるんでるとどういう事になるか、一つ教育してやりましょう」

かくして、我々は後方を大迂回して敵フラッグに奇襲をかけ、オフ会と勘違いしている輩に一撃を加えるべく作戦計画を発動したのであった。

一番の要は移動ルート策定である。敵側から見つかってしまっては作戦は失敗であるが、かといって迂回路を大きく取り過ぎると道に迷ったり、想定する地点から大きく外れた場所に出てしまい制限時間内の作戦遂行が不可能になってしまう場合もあり得る。
かといって通常の迂回路をうろうろしていては、奇襲をかける前にその意図を察知されてしまう可能性もまたある。

どうしようかと思っていた時、ちょうど「暑いので大休止を入れる」旨が主催者から告げられた。
これはチャンスだ。
我々はフィールド内で、普段使わない辺りを念入りに探索し、使えそうなルートの発見とそのルートを使った場合の敵後方への出現地点について仔細に偵察を行った。
途中、どこを通っても水溜りの様な小川を越えねばならず、この点は仕方がないがそれ以外はほぼ理想通りのルートを見出す事が出来、我々は当初の目的を終えて一旦セーフティに戻った。

本陣に戻ってあれこれしていると、ちょうど長い休憩時間が終わってゲーム再開が告げられた。

「よし、人参解放軍出撃!」

ゲーム開始と同時に、我々はまず左手の山の麓へと走った。
敵に通路を通過する際に見つかりたくなかったのと、万が一敵の迂回部隊が存在した場合でもこれとの接触を避けて進みたかったからである。
もっとも、まともに前線に出てくるのが3ー4名では、迂回どころではなかった筈だから、これは杞憂だったかもしれないが。
高く茂るススキの間を一気に駆け抜け、目指す渡河地点まで到達した。この行軍途中も相変わらずの高笑いが敵フラッグ方面から聞こえてくる。

しかしこのお陰で大まかなフラッグの方向と、自分達が油断している事の両方が我が方に筒抜けになっているとは夢にも思っていないようだ。

少々足を濡らしはしたものの、渡河は問題無く成功。すぐに指示を出す。
「ここからは我々も音を出さないよう、細心の注意をして前進」
位置的にはちょうどフラッグ側面の辺りに出たのだが、更に慎重を期する為、一旦フラッグ後方へと更に回り込む。
茂みを抜けるとフラッグに向かう街道へ到達した。すぐに飛び込める様ブッシュとの境目付近を忍び足で進む。
フラッグは通路から3m程ブッシュに入った地点にあるので、敵の所在も通路沿いではなくフラッグ周辺に展開していると想定していたが、運悪く路上でふらっふらしていたのが1人いた。ポイントマンの同志金子がフルオートをぶっ放すと同時に叫ぶ。

「しまった、勘の良い奴がいた!」

これを合図に私と同志砂糖人はブッシュに飛び込む。同志金子は通路際に残って牽制しつつ、機を見て前進。
ブッシュは見た目以上に進行を阻害し、我々は根本近くのけもの道のようなところを縫って進む事となった。
しかしこのお陰で、敵からは発見しずらく、まためくら撃ちされても貫通しない、と完全にに我が方にとって有利に展開したのは天佑と言えようか。

一方の敵軍は、滑稽なほどに慌てふためき右往左往し始めた。
まさかの真後ろからの奇襲に、迎撃というより逃げ回っている様だ。
我々から逃げようと、本道を進む我が友軍前に飛び出してしまい敢え無く討ち取られる者まで出る始末。
絵に描いたような包囲殲滅戦となり、騒ぎの元凶達はあっという間に潰滅した。
あとは、運よく生き残った若干の名を叩くのみ。
フラッグ前に1人いるのはわかっていた。ただ右手2時方向にいるのが別動してきた味方なのかどうか、がどうも確信持てなかったので、しはらくブッシュの中で息を殺し動きを見る。
味方ならフラッグ方向に動くだろう。こちらのブッシュに接近するなら敵だ。

暫くの沈黙の後、人影がブッシュを覗き込むように近づいた。

マーカーを確認!敵だ!

モーゼル一閃、ブッシュ越しだが正確に1撃で倒した。
これで気がついたフラッグ前の敵が撃ち込んで来る。
だが、茂みを盾にし更にプローン(伏せ)の体勢にある私はフルオートでもそうそう当てられはしない。
敵射撃の間隙とブッシュの間隙を縫って反撃する。
こいつもモーゼルのダブルタップで仕留めた。

この時、茨に引っ掛かったりして遅れていた同志砂糖人が追いついた。彼も既に別方面の敵1名を倒している。
この時点でフラッグ前に敵影はない。

「よし、突撃だ。走るぞ!」

一気にフラッグ目指し突っ込む。
もしかしたらまだ残党がいて反撃を受けるかと思ったのだが、それは皆無であった。
そのまま旗を取り、勝利確定!

終了を告げ通路に出たところで、同志金子と合流した。
聞けば、彼も通路側から敵2名を殺っている。
彼の通路上からの支援によって、我が赤軍全体によって前後に挟撃された敵は更に人参解放軍によって左右から挟撃を受ける形となり、まともな対応もできぬまま各個に粉砕されていった。
如何に私がブッシュを有効に使ったとはいえ、同志金子の善戦がなければフラッグまでの道のりはより長くなったであろう事は間違いない。

結果、敵10人中の5人を我が人参軍が撃破、しかもフラッグまで人参解放軍が陥落させたのだ。
綿密な事前調査と臨機応変の処理、そして人参軍メンバー各員の錬度の高さが生んだ赫々たる戦果として本作戦は人参軍史上に残る一戦となったのである。
 




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