「JAVAの伝説」第二章  全軍無条件感服の巻 
2006/6/4


人参解放軍根拠地である牛久・井岡山フィールドにて:(人参解放軍よりの参戦 6名 ゲーム全体の人数 7名 ・・・新フィールド試験開催により少人数)
 筆・紅中兵
 

 この日は正規ゲームではなく、我が軍が新たに発見した革命根拠地にて実際にゲーム遂行が可能かどうかを見極める為の試験的な集まりであった。従って動員数も多くはなくどちらかというとお祭りイベント的な雰囲気で、ふだん見ない様な得物もちらほらと集合したのであった。

そんな中、我等が同志佐藤人がいつものガンケースから取り出したのは見慣れない茶色のストック。おっ初物ダネ!
「たまたま見つけて、安かったので買っちゃいました。中古ですよ。」
それはVSR-10のリアルショックバージョンであった。とはいえサイトはフロント・リアとも取り去られておりスコープマウントだけが乗っている。聞けばバレルも交換されており、先端はサイレンサーが付けられる様になっていて実際にどこかのサイレンサーが付いていた。
これで買ったままだそうである。初速を測ってみたが85m/s前後と全然問題ないレベル。
とはいえ、スコープはおろかオープンサイトすらない状態。普通に考えれば単発な事と引き換えにピンポイントの狙撃を以って補うべき銃がこれではその性能を生かせない・・・と考えるであろう。
しかし、この持ち主は誰あろう同志佐藤人である。そう、かつてコクサイレミントン・銘「跡苧禽700」を駆使して戦場で暴れ回った不敗の英雄は、今日もまたサバゲの歴史に新たな1ページを刻んだのであった。

今回のフィールドは広大無辺な上に、初めての場所なので誰も地理に詳しい人がいない事から、MIA(戦闘中行方不明者)を出さない為に赤黄両フラッグとも相手のフラッグが見えるところに設置した。とはいえ距離が非常に開いているので開始直後から弾が飛んでくる様な事はない。フィールド中間程度まで移動して来てやっとギリギリ射程といったところであろうか。
フラッグ間の真中部分はそんな感じで見通し良くスナイパー天国なのだが、左右はどちらも低くなっておりしかも適度に茂っているのでプローンしてしまうと完全に見えなくなる。いや見えないだけでなく延々続くブッシュで弾も抜けてこないので、頭を出しているところを狙い撃つか或いは適度に接近したところを見はからって叩き込むかしないといけない。この点は射程距離の短い銃・ハンドガンでも十分戦力として機能する事が出来るという、2面性をもったフィールドの取り方をしたのであった。

この様な状況で何ゲームかやってみたが、同志佐藤人はまるで2km先の山羊をヒットするというアフガンゲリラよろしく、サイトすらないVSR-10で次々と初弾ヒットを決めて敵兵を血祭りに上げていった。しかもそのうちのかなりの率は眉間に一撃である。
彼曰く、「スコープマウントが十分サイトの代わりになり、また距離感が掴みやすいので弾道を読んで狙う事が出来る」との事。
並み居る電動が出る幕もないまま彼一人で敵全員を狩ってしまった事もあり、フィールドは「佐藤人恐るべし」と震え上がった。

しかし、実は敵側に1人だけ、彼の快進撃を阻止し得る者が存在したのである。
それは、偉大なる同志主席が東京西部地域でスカウトし現在は「武士」に籍を置く五十鈴輜重兵であった。
彼こそはいかなる時も旧日本軍装備に身を固め、得物といえばKTWが三八式を出す遥か以前より愛用の「なんちゃって三八式」。これを自在に操ってタクティカルな攻撃がウリの「武士」中で他メンバーに引けを取らずに物量で迫る米帝的ゲーマーを撃破し続けてきた猛者中の猛者である。
広く交友のある我が人参解放軍でも、彼ほどボルトアクションライフルが似合う男は他にいないと言って良いだろう。少なくともこの日までは・・・

 期せずして敵味方に分かれた佐藤人・五十鈴輜重兵の旧日本軍ゲーマー
この2人はまた、武器だけでなくその装備も好対象であった。
五十鈴輜重兵は言うに及ばず、同志佐藤人も通常軍装は旧軍で通している。しかし五十鈴輜重兵は水筒・銃剣まで全て着用し常に気を抜かないフル装備、往々にして鉄兜までも着用して戦に臨んでいるのに対し、佐藤人はゲームにおける機能性を事視、細々した装備品ま無論のこと弾薬盒すら外し雑嚢押さえとして革帯だけしかしてない場合もしばしばである。
この日も同志佐藤人は階級章のない防暑衣に雑嚢と何も付けていない革帯、頭部は略帽すら被らず茶色のボロきれを鉢巻にしていた。
セーフティでは誰もが「ムルデカだ」「赤白の旗が欲しいな」と噂しあっていた程である。
この様に、あくまで正規軍としての規律を貫き通す五十鈴輜重兵と、対するは階級も祖国も捨て現地住民と共に革命に身を投じた残留日本兵チックな佐藤人。
国家の威信と鉄の規律は俄か仕立ての烏合の衆を撃破して大東亜の秩序を回復するのか。それとも労働者大衆の側に立つ者は熱い民族自決の精神を後ろ盾に革命を成就させる事が出来るのか。
当然の帰結として、参加した誰もがこの両雄が直接対決したらどうなるのかを期待しない者はいなかった。
そしてその時は、ふいに訪れたのであった。

 何ゲームかこなし、全員がほぼフラッグ周辺の地形を会得して迂回に待ち伏せにとだいぶ自在な動きが見えてきた頃であった。
この時のゲーム状況としては、真ん中の見通しが良いエリアは静まり返っていたが左右は共に激しい激突が展開され、気が付くと左を制したのは同志佐藤人、右サイドは電動兵と五十鈴輜重兵の2名、ちょうど中央を挟んで敵味方が分かれる形となった。数的にも装備的にも2対1の2が有利、しかもこの2名は適度に距離も開いており、仮に佐藤人がどちらかを倒せばそれで位置はバレて残り1名に食われるのではないか、定石からはそんな展開が予想される状況であった。
この時点で佐藤人は自フラッグ寄りにおり、敵電動兵は先行してそのフラッグに近づきつつあり、そして後方では五十鈴輜重兵が狙撃の機会を伺っていた
佐藤人の位置を掴みかねていた電動兵がブッシュから頭を上げる。そして動く。

「パスン」「ヒットー」

電動兵は撃破された。しかしせっかくのチャンスも五十鈴輜重兵の位置からは遠く、佐藤人の居場所は特定できたものの射程に捉える事は出来なかった。殺る為には間合いを詰めるしかない。

かくして、誰もが期待していたボルトアクション日本兵同士のタイマン勝負本ゲームの勝敗を決する一戦として遂に現実のものとなったのであった。

先ほどの一撃で両者とも互いの存在に気付いたが、射程外にある為どちらもムダ弾など撃たない。お互いにブッシュに沈んでは移動して予想外の地点に出現し、敵の動きを探りまた沈んでいく。
ヒットされた我々はフラッグ後方の邪魔にならないところに固まって、この世紀の一戦を固唾を飲んで見守っていた。
(実はセーフティが遠くていちいち戻るのが面倒だったのだが、おかげで皆が歴史の証人となる事ができたのである)

 ボルトアクション同士の一騎打ち。それは電動の派手さは微塵もない。
一発で勝負を決められなければ一気に形勢は逆転するのである。
必殺必中の機会まで銃声のしない静かな、しかし迫力は電動戦の比ではない、まさに漢と漢が火花を散らして激突するその空気はフィールド全体を緊迫させていた。

五十鈴輜重兵は自フラッグ寄りにいる為、軍旗防衛の意味もありどちらかというと動きは小さいがしかし何とか佐藤人を捉えようとじりじりと移動しつつ最低限に体を晒してはスコープで探りを入れる。
一方の佐藤人は電動兵を狩った余勢を駆って、沈んでは大きく機動しみるみるうちに間合いを詰め、敵をその射程に捉えるべく人参軍伝統の大胆な前進を繰り返す。
やがて佐藤人の機動速度が勝り、頭を上げた五十鈴輜重兵は佐藤人が「さっきいた所」を探っている。この機会に佐藤人は五十鈴輜重兵の位置を把んだかに見えた。
「おっ遂に殺るのか?」
誰もがそう思ったに違いない。
だが、佐藤人は極めて冷静だった。気配を殺して再びブッシュに沈むと機動を開始、両フラッグを繋ぐフィールド中央ライン近くまで一気に移動して構える。この時五十鈴輜重兵が想定していた佐藤人の潜伏地点と実際の場所は、角度にして既に45度近い開きが。
静かに時を待つ佐藤人。再び五十鈴輜重兵がその頭をもたげた時、遂にVSRー10から渾身の一撃が放たれた。

「パン」「ヒット!」

五十鈴輜重兵は被弾した後に、はじめて自分が見込み違いを狙っていた事を悟った。
孫子曰く「実を以って虚を打つ」、正にこれを体現した見事な1撃に、我々一同は関心する事しきりであった。

銃談義は楽しいものだ。実際に買わないまでもあれが良いこれはどうだと研究を怠らない事は大事である。
しかしながら、いざ実戦となったらもうそれは通用しない。バレルがどうのスコープがどうの、だから不利だとかだから負けて当然などと理屈をこねる前に、今この時に与えられた条件下で、手中にある銃を信じその能力を最大限活用して精いっぱいやってみる事が必要なのだ。
この日、サイトすら無い銃にてのベ20人以上の戦果をあげた同志砂糖人の奮戦は、ふだん豊富な物資に恵まれている我々がついぞ忘れがちなとても大切な何かを気付かせてくれるきっかけとなった、そんな歴史的1戦であった。
 




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