作戦名:「椅子の踊り子」
2005/11/27
チームタラン主催ゲームにて:(人参解放軍よりの参戦 4名 ゲーム全体の人数 15名(うち2名は火器不良により脱落))
筆・紅中兵
この日、午前中は我々と組む様に指定されたチームが銃器不調により戦力激減しており、本来なら8対7の筈が8対5、しかも「8」側はチーム内連携もバッチリ、という制約された状況下での戦闘を余儀なくされていた。
定石通りなら地形に沿って待ち伏せし敵戦力を削って行き、機を見て反撃という守備中心の陣形を取るべきである事は重々承知していたが、しょっぱなから全てにわたって劣勢という被虐的状況が我々をして華々しく散るという桜花的精神にブースター点火してしまった。
従って今回の作戦は極めて単純明快、総員全速力で斜面を駆け下り、1丸となって最短コースを一直線に敵フラッグ目指し突進、である。
当然敵側の尖兵と真っ向から衝突する事になるが、我々は「5人で人海戦術」を敢行し、損害を省みないその進出速度によって再三に渡り敵の前線部隊を震撼せしめた。
結局、戦力の不均衡を気にされるゲーム主催側の心配を杞憂として午前中をこの劣勢な状況のまま戦い抜いてしまったのである。
さて今回、戦闘エリア内には実は誰もが気になっていた新たな建造物があった。
フィールド中央にコンクリートブロックと板材を組み合わせたベンチが数脚、明らかに人手によって設置されていたのである。
フィールドのど真ん中、谷間の見通しが良いところに設置されているので座ったら眺めは良さそうだ。
しかしこの場所は、その地理的状況も然る事ながら遮蔽物がないという状況とも相まってゲーマーの見地から見れば、ゲームの度に彼我の交戦が間違いなく発生するという激戦地中の激戦地でもある。
フツーに考えれば十字砲火のど真ん中に当たる場所に、そのベンチ群が存在していた訳である。
ゲーム進行上は全く何の役にも立たない、というか近づいたら危険な事まちがいない死のワナといっても良いだろう。
しかしながら午前中の吶喊精神がまだ記憶に新しい我々は、組み分けのし直し(稼働率の悪い半島系のチームは敵方へ)でやっと勢力均衡になった午後の部においても、この椅子を攻略せずにはおれなかった。
しかし、再三繰り返しては組となった他チームさんに迷惑がかかる。その為、1発だけ限定ネタとして我々は「ゲームの真っ最中、4名全員でこのベンチに座る」という戦略目標を掲げたのである。
かくして勝敗の趨勢に全く影響しない(いや、味方にとっては明らかに悪影響だったかも?)本作戦は始動された。
我が人参解放軍は本目標達成の為、フラッグ周辺では前方よりのシフトを布いて開始の合図を待った。
このフィールドは谷をはさんで両サイドが急斜面となっており、そのため一旦急降下した後にわずかな平坦地を駆け抜けると、今度はハンバーガーヒルもかくやという急坂・心臓破りの丘を登って敵フラッグを目指すことになる。
特に今回我々が開始した側からだと、敵側斜面はほとんど遮蔽物がなく、従って斜面上方にて待ち構えられると攻め上るのは相当の困難を伴う。
しかしこれは逆に言うと、敵側も攻めを志向した場合は早急に斜面を駆け下り、谷底の平坦地にあるブッシュまで到達しないと斜面の途中で射竦められてしまう事を意味するので、アフガン戦線みたいな山対山・斜面対斜面での撃ち合いを指向しない場合はお互いに高機動戦闘が要求される。
しかも斜面がかなりきついので、転げ落ちないようにという注意も必要だ。
この様な状況下、待ちかねたスタートコールが発せられた。
我々4名は脱兎の如く、斜面下りも手伝って猛烈な勢いで下山、ベンチを目指して殺到した。
開始前はほぼダンゴ状態で待機していたのだが、やはり軽量・高機動の利点が発揮され手槍(ハンドガン)装備の2名が早くも数メートルの差を開けて先行する。
私は火力支援の為に持って来たトンプソンを腰だめに保持して後に続くが、間は開くばかりだ。さすが手槍隊、早い!
先駆けは同志マカーロフ、そのすぐ後を同志砂糖人が14年式を手にして遅れず食らい付いて行く。
二人とも転げやしないかと心配になるほどの猛ダッシュをかましている。
谷間の平地に出た時、向こう斜面を駆け下りてきた敵が慌てて戦闘態勢を取り始めるのが見えた。
このフィールドに慣れているとはいえ、我々の予想外の展開に対応が間に合っておらず、降り注ぐ銃弾はまだ正確にベンチ周辺を捉えていない。
この間に同志マカーロフが着席に成功!
「やった、座ったぞー!」
彼はすぐに立ち上がり前方の敵に対し交戦しようとしたが、その際に飛来する弾に触れ戦死。
その間に続いて同志砂糖人も着席に成功。しかし座った瞬間に雨あられと銃弾が降り注ぎ、彼もまたベンチ上で敢無く最期を遂げた。
私はこの時ベンチまであと2m程の地点に到達していたが、すでにベンチ周辺は敵の火点に捉えられてしまっており、勢いに任せ死を賭して接近を試みたもののやはり全身に銃撃を受けて彼らの後を追うこととなった。
私の更に後方から着席を試みていた同志イノウエは止む無く、ベンチに至る手前の立ち木を遮蔽物として交戦を継続、敵を排除した後の着席を試みていたが、ベンチを挟んだ激しい銃撃戦を展開した後、残念ながら撃ち負けて彼もまたセーフティーへの道を辿る事となった。
かくして作戦は終了したが、結果は50%の達成率(2名着席)と我々の予想以上であった。
(目標は目標として、想定損害は100%を覚悟していた)
・・・この乾坤一擲の大決戦について、戦後の歴史家達による考察では、これは
・定石の範疇を超えた奇想天外な作戦により、完全にフィールド慣れしている筈の敵の虚を衝く事が出来た
・人参軍の特色である手槍隊を中核とした高機動性が、通常ゲーマーでは困難な高速機動を可能とし本作戦を単なる構想に留まる事なく成功を導いた
と、理想的な遊撃戦の様相を呈した展開により成し遂げられた為であると分析されている。
これ即ち、偉大なる同志主席の直接指導の下に展開された絶妙無比の作戦と、これに続く同志達の必勝不敗の信念が、サバゲー界の常識を覆し不可能を可能にしたと言えよう。
勝利と栄光とネタ世界を邁進する人参解放軍万歳!