未完の対戦

2015/2/8


2015年2月11日
筆・紅中兵


その日は常連で重鎮のの同志金子や林当家が欠席 にも関わらず、我が軍は7名を数える参戦となり、主催チームさんを人数では越える勢力となった。

とはいえ、この日は初顔合わせとなるメンバーもおり、小隊長クラスのメンバーを欠く状況とも合わせて考えると、まだお互いに打ち解け普段の人参軍らしい連携が出来るという体制は出来ていない。

しかし、時は容赦なく我々を戦いへと誘う。
主催チームさんはゲスト加えても5名のため、予想通り2名の差はあるがこれで組分けとなり、実質はチーム単位での対戦が開始されたのである。

1戦目、私は敢えて一切の策を授けなかった。
そして、全体の流れをみる為に1テンポ遅れて前線へ。

思った通りだ。

同志達はほぼ横隊陣形となって中央広場を真っ直ぐに敵に向かい前進。
しかし5秒としないうち、そちこちで上がるヒットコール。
敵も全速で突っ込んできて、遮蔽物の利用に甘い同志達が次々と狩られていった。

そして、その穴に食い込まれ包囲・集中射で次のラインもあっという間に崩壊。

敵は損害皆無で、みる間に我が軍は私だけになってしまった。
2人のアドバンテージを活かす事もなく、5対1まで押し込まれた訳だ。

先走る敵尖兵だけでも返り討ちに、とアンブッシュして有効射程距離まで近づくのを待つ。
動きは完全に掌握しているが、朝は氷点下近い気温の中をガスガンで狩ろうというのだ。
それなりに肉薄しなければ有効打を放てない。

あと5m、そのまま来い・・・

と狙っていたところを、迂回して来た別の敵兵に横合いから撃ち込まれた。

かくして、初戦はなす術もなく全滅

2戦目、先ほどの結果をみればこれで作戦を立て、連携する意味がわかっただろうと思われる同志達にこの日最初の策を下す。
敵は必ず迂回部隊を送り出してくるので、我が方は左右に分かれ敵フラッグを目指す事とした。

私達3名は右側、塹壕を越えて更に奥を進み敵フラッグ後方から再度塹壕を渡ってフィールドに戻りフラッグを側後方から襲うルートを取った。

塹壕を渡り終わりちょうどフィールド半分を越えるラインの先へ出たところで、塹壕側を進む敵と接敵、銃撃の末双方1名の被害を出すもののこれを撃退し、なんとか進攻を続けようとしたところ、正面からの発砲、1m程右手に着弾。

今度はスナイパーだ。

私は左後方にまだ王同志が健在なのを見て取ると、大きく右前方に動く。

スナイパーに狙われたら隠れるんじゃない、大きく動くんだ。
敵が姿勢を崩したらこっちに勝機が生まれる。

私は王同志のRPKに期待し、大胆に機動を開始。
さて、ハサミ撃ちの体制をと思った時、無情にも味方フラッグ陥落のホイッスルが鳴り響く。
我々以外は全て駆逐され、旗は恣に奪取されたのだ。

3戦目、確かに敵の練度は高いのだが、今回はその差以上・想像以上に味方の攻撃力・防御力が低い事が先の戦いで覆い難い事実として我々の前に突きつけられた。
しかも2度に渡る完敗で、士気も明らかに低下しているのがありありと伺えた。

悪しき方向ではあるが、全軍の意識は揃った。
私は今こそ人参軍本気の戦術を発揮し、「同じメンバーでもここまで変わる」という事を知らしめる時と判断、まずは「勝てないまでも負けない」作戦で士気向上を図った

基本行動は「専守防衛」、ただし戦術についても事細かに伝え、かつ各員の配置についても完全に掌握。

そして開始された第3戦

あらかじめの指示通り、各自は持ち場に向かい散っていく。
私はフラッグ側をわざと無警戒に行ったり来たりし、注意をこちらに引きつける事でその手前に潜む同志達に敵の警戒が薄くなる様にした。
勿論、それに加え敵情を伺い動きがあれば伝える事も想定して、だ。

敵はさすがにベテラン揃い、こちらの様子に異変を感じたのか移動が先ほどとは打って変わって慎重になった。

しかし、そんな中を塹壕近く静かに動く敵を発見!
人数から考えると別方向も危ない。私はフラッグ方面に戻りながら敵来襲を告げた。
案の定、私だけに気を取られていたのか不用意に接近した敵は待ち伏せする同志の銃弾であえなくヒット。

よし!流れは変わった!

その時、中央正面でも銃撃が開始された。
双方に上がるヒットコール。
これも、こちらが絶対優位を取ったからタイに持ち込めた結果だろう。

これまで大人しい右手ブッシュ側に様子を見に行くも、敵の動く気配なし。
どうやら中央と塹壕側に分かれての進攻だった様だ。

中央はまだ十分な人数がアンブッシュ中だったのが見て取れたので、私は塹壕側の補強に再度左へと向かう。
ここで銃撃戦に参加、被弾し戦線を離れるも、アンブッシュ中の同志がその敵を返り討ちにし、結局この回は時間切れまで人参軍フラッグは厳として敵に渡る事はなかった

4戦目、ついに流れが変わった。
「オレ達でもあの精強な敵を抑えられる」という結果が自信となって、表情に現れている。
皆が心なしか、先ほどより饒舌になっている。

いよいよ、人参軍必勝の紅中兵戦術を披瀝すべく、時は満ちた様だ。

私は全軍に告げる。
「フラッグ防衛隊を一部抽出し、全軍一丸で敵フラッグを強襲する!」

2手に分けなくて良いのか、と誰かが言った。

私は告げる。
否、彼我の戦力を比較した場合、全軍の火力を以て圧倒する必要がある。
今日の実力差では、2人・3人なら敵1人で十分対処出来てしまうのだ。

誰もがこれまでの戦いの結果を思い起こし、冗長な議論をする必要もなかった。

作戦を告げる。
ルートは左ブッシュ、もし交戦したら全火力を集中して排除し敵フラッグまで到達する事!
人参解放軍、前進!

ジョン・×(カケル)の、今は中堅組を先鋒に我が軍は躊躇なく進む。
ブッシュほぼ中央に到達した辺りで、ぱらぱらと雨が降ってきた
本降りになりそうだな、一瞬ためらったが、ならば我が軍勝利で一気にカタを付けるまで
そう思い直し、足の鈍ってきた部隊を更に前へと押し進める。

ブッシュを抜け、敵フラッグ後方平原へ到達。
これまで交戦も敵影もなし。
平原に全員が抜けてくるかどうかというところで、味方フラッグ方面から激しい銃声が。

どうやら敵は別ルートを迂回して我がフラッグにアプローチを行った様だ。

私は残してきた同志の顔ぶれから、同志達を促す。

「ここまで無傷で来た。この戦力を以て一気に敵フラッグに肉薄するぞ。
急げ!もたもたしていると味方フラッグが先に陥落してしまう!」

同志達が、まるで先陣争いをするかの如く一斉に勇躍前進を開始する。
たちまち眼下に現れる敵フラッグの星条旗。

私は振り返り、部隊の配置を確認する。
遅れる者1名、脱落1名。
それ以外はほぼ横隊隊形となってフラッグ前に展開完了している。

遅れる者を急かせ、配置完了した。
敵反撃は・・・動くものなし。

ジョンと私は目が合い、どちらともなく頷いた。

時は今だ。

間髪を入れず叫ぶ。

「突撃ぃーっ!」

人参解放軍のお家芸、全軍突撃!

右手ブッシュ側から敵の発砲が合ったが、銃声からするに距離もありまたブッシュ深いところからだった様で、全く有効打とはならなかった。
おそらく、我々の迅速な進攻と圧倒的人数差に迂闊に動くことも出来ず、不利な状況下で防御を強いられたのだろう。

斯くして敵フラッグは見事陥落、我々は遂に1勝を挙げる事が出来た。

1戦目の圧倒的劣勢から、わずか4ゲームで形勢逆転を遂げたのである。

・・・この突撃は必要だったのか、という事を検証したい。
もしこの時、この段階で突撃発起していなかったら、

@敵フラッグを前にもたもたしているウチに味方フラッグ陥落(実際、ずいぶん前に味方守備隊は残1人になっていた)
A攻撃隊は敵守備隊の冷静な反撃を受け戦力低下、敵フラッグ陥落は失敗

のいずれかを辿っていただろう。

サバゲにおける突撃は単にノリ・酔狂だけのものではない。
適切な時宜を得て実施すれば、勝利への最良の戦術足り得るのだ。

特にこの日は、絶対的練度が上の敵チームと、チーム一体連携・巧妙な戦術を駆使してその実力差を埋める我が軍との対照的な一戦だった訳だが、この突撃逆転勝利を期に後は一進一退のゲーム展開となり、面白くなりそうだった矢先、雨が強くなって来た事から主催チームさん判断で昼を待たずお開きとなったのであった。

(終)


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