人参軍的サバゲ伝説

長いようで短いサバゲ活動の中には、長らく人口に膾炙する様な名(迷)勝負というのも数々存在する。そのイベントにたまたまいた、もしくは直後に話を聞いたという故老達は当たり前の様に「〜の件」という話をするが、それを知らない若者も多い訳で、時々「〜の件って?」という問い合わせをよく受ける。
そこでこのページではそんな我々定例戦常連ゲーマーの間では知らぬ者が無い数々の「伝説のエピソード」を、知らなくて歯がゆい思いをしている人達の為に語って差し上げよう。
勿論「伝説」な訳だから、なかには語り口が神話的誇張に彩られる場合があるかも知れない。しかし、全てはかつて起こった事なのだ。
猶、タイトルはたいていの場合「〜の件」として語られる際の呼び方を使用している。決して語り部の創作ではない。

お題目
・同志マカーロフ伝説
・第四陣地の喜劇
・1>19、叙勲は伊達じゃない
・伝説のM93R

・同志マカーロフ伝説
・序章・・・電車賃ツケ
 それは三郷で行われたゲーム時の出来事であった。
 神奈川方面から出撃する同志マカーロフにとっては埼玉・千葉国境は間違いなく遠隔地であり、ある程度の時間を見越していた筈だがそれでも到着は予定時間を過ぎてしまっていた。
電車の本数もさほど頻繁ではないので、駅に着く度にこれかこれかと見ていたところ、来た!
さすがに遅れた事を自覚しているのか猛ダッシュで向かってくる。・・・とそのまま素通りして集合地点後ろのコンビニに一気に突入。速攻で何かを買うと再び駅へ突進して行った。
そういえば荷物無かったな・・・
 やや時間空いて、今度は荷物を手に出て来た。
落ち着いているので何があったのか聞いたところ、小銭がなかったのでくずして来るからという事で改札を出してもらったんだそうな。
電車賃をツケにするとは大胆。その場に居合わせたメンバーで感心していたが実は彼の伝説はこれだけでは無かったのである。

・不法入国
 これは東京西部で行われたゲームに参加した際の話。
フィールドが微妙に遠くて、どこの駅からでも歩くと20分程度かかる場所であった。当初はしょうがないので全員で歩くつもりでいたのだが、急遽参加する事になったメンバーがいて、車も出せると言う。人数を考えると定員ギリギリなので、フィールドまで乗せてもらう事にした。
ところがいざ当日になってみると、車が出るという事で増えた荷物は車内を圧迫、ルーフキャリアーまでフル動員したが荷物を載せてみたら座るスペースが確保出来ない。
この時、マカーロフは志願した。
「この中で私が一番細いので、荷物番兼ねて荷室に乗りましょう」
かくして、ワゴンタイプ(さすがにセダンじゃ出来ないネ)の後部にまずマカーロフが体育座り状態で入り、その上からドカドカを荷物を積み込んで何とか人&荷物は1台の車に収まった。
勿論座席の方も荷物が載っているので人の方はピッチピチに座っている。
窮屈ではあるが、まあ車で移動すれば5分程度の事なので我慢してなんとか移動は無事完了。
到着しさて、とリアハッチを開ける。荷物の山でマカーロフは見えない。上から順に荷物を降ろしていく。1つ、2つ・・・まだ見えない。オイオイ本当にいるのかな?
半分近く降ろしたところで、やっと人間の姿が見えて来た。
まるで人1人隠していたみたいである。誰かが言った。
「何か不法入国の現場みたいだな」
一同大爆笑でお開きとなった。
とはいえ、彼の献身的犠牲がなかったら我々は全員での機動は出来なかった。ありがとう同志マカーロフ!

・最前線で弾乞いして共倒れ
 これは、三郷のけだものさん主催ゲーム時の事。
我々人参解放軍は中央通路を接敵するまで前進し敵の前進を阻む為、開始と同時にダッシュで中央付近にある涸れ川の自然塹壕付近まで進出した。紅中兵主席と砂糖人はやや左、マカーロフと同志イノウエは中央よりに、自然と2分してこの塹壕内壁まで到達し配置についた。
その時、我々の更に左前方に高速で接近する複数の足音が。更に前進しようと尖兵となって壕上まで上がっていた左端の砂糖人に気付き激しい銃撃が始まる。しかし、こんな状況なのにちょうど右手後方の方からはなにやら和やかな会話が・・・。どうやらマカーロフと同志イノウエが何か話しこんでいる模様だ。
ヲイヲイすぐ前には敵が迫っているってのに・・・
少なくとも交戦中という事で、まあ口は動かしても良いからどちらか1人は周囲に目を光らせていてくれれば・・・しかしそれは淡い期待だった。
敵1名がぐっと前進し、それと同時にフルオート1連射。
「ヒット」「ヒットーッ」続けて上がるコール2つ。
かくして、2人いっぺんに仲良く戦死。

それにしても彼らは敵前で、一体何をしていたのか?
真相はこうだ。
マカーロフが補充を忘れて弾切れに陥り、近くにいた同志イノウエに助けを求めた。ところが同志イノウエもこの時たまたまマガジンは銃に付いている1本だけだった為、マガジンから抜いて渡していたそうで、これを2人がかりで和やかにやっていた。
当然周りなんか見ていなかったので、マカーロフはそのまま背後から、そして異変に気付いて顔をあげた同志イノウエは眉間に一撃、とまるで悪者ザコキャラみたいな恥ずかしいヒットのされ方をしたそうだ。
塹壕内壁にいるという安心感から油断していた様だが、敵は正面からではなく斜め前方から進出して来た為に丸見えで、1トリガーで2人とも餌食となってしまった訳である。

今回の教訓:
 ・戦闘中は常に油断するな
 ・予備弾を持参せよ

本件の貴重な失敗から、のちにマカーロフに供与されたフェイスガードには予備弾収納機構が付加され、その部分は外観上ナウ○カのマスクっぽくなったという歴史的な因縁に繋がる一戦であった。
 

・チャラリ?!鼻からBB弾
 これは神奈川の某河川敷ゲームでの事。
午後のある時から、マカーロフが急にくしゃみをし出した。それも結構頻発である。
「ついに花粉症が始まっちまったか?」
彼は不審がったが、それにしては目が痛いわけでもなくとにかくくしゃみだけが続く。それも往年のドリフを髣髴とさせるような「ヘーックショィ」という長くて大きいくしゃみである。
フィールドをフラッグへ向かう途中もくしゃみは止まらない。
加藤茶ばりの「ヒーックショィ」を聞いた誰かが言った。
「上から金タライが落ちてきそうだな」
でも本人はネタでやってる訳ではないんだからしょうがない。
こんなくしゃみしてたんじゃあアンブッシュも何もあったもんじゃなくて、数ゲームの間あちこちでくしゃみを響かせつつフィールド内を走り回っていたが、休憩時間にふと鼻をかんだ彼は声をあげた。
「あっ何だコリャ!」
なんと、鼻水と一緒に見慣れた白い丸い物体がティッシュに。
いつどこで入ったのかわからないが、鼻の中にBB弾が入っていたのである。
勿論この後、彼のくしゃみがピタリと止まった事は言うまでもない。

教訓:
体に異常を感じたら、BB弾を摘出せよ!

・ロングマガジンだけ持ってゲーム開始
これは埼玉方面に進出した際の話。初めてのチームとの交流戦という事で、お互いに慣れる目的もあり午前中?午後始め頃まではチーム毎に2分してのゲームが続いた。
さてそろそろ慣れたでしょう、という事でここからチーム単位に戻してもらい、我が人参解放軍は小勢ながら4名勢ぞろい、更に組んだチームも主力は旧軍系と、大いに士気が上がっていた。
「これは一発、敵前突撃でも仕掛けますか」「良いですね、是非やりましょう!」
紅中兵主席は同盟軍部隊長とそんなやり取りをしていた。突撃といえばマカーロフのお家芸である。
それでは彼は先頭に立って・・・とふと振り返ると、彼はロングマガジンを銃に付けずに握り締めている
「用意は良いか!」「?・・・?」
良く見たら腰周りにも銃がない。勿論手に持っているのはロングマガジン1本だけ
あれあれっと上を見たり後ろを見たりしてるが、フラッグまで来る途中に落とした・・・って事はまさか無いよね。うん、やっぱり。
どうやら、ロングマガジンを暖める事をばかり考えていて、肝心の銃本体をセーフティに置き忘れたまま自フラッグまで来てしまったのであった。

フィールドに熟知した敵兵がてぐすね引いて待ち構える中にフラッグの方向以外ほとんど不確かな我々が突っ込むのである。先頭から2?3名は交戦の隙もなくそのまま昇天は確実と思われたので、忘れた自分を悔いつつそのままフラッグゲット目指そうと言ったのだが、見かねた同盟軍の方がコッキングハンドガンを1丁貸してくれた。

そんなこんなでゲームは開始された。我々は敵防衛ラインの前で一旦横一線になった後にフラッグめがけて突撃を敢行する予定であったが、敵は我々の予想を越えた速さでフィールド中央まで進出、まだ機動途中で目ぼしい遮蔽物まで到達も出来ないうちから次々と打ち倒され、案の定マカーロフも1発も撃てずにセーフティ行きとなった一人であった。

・・・こんなネタばっかり読んでいるとマカーロフってその程度のゲーマーなのかと思われてしまう恐れがあるのでお断りしておくが、実際にはガスガンのメカニズム全般に長じておりその扱い・チューニングの腕はピカイチ、しかもゲームプレーとなればゲーマー中でもなかなか出来る者がいない「走りながら射撃」が正確かつ確実(既に何人もがヒットされているという実績あり)に出来るという、文武に秀でた稀有な存在なのだ。
そんな強者だからこそ、伝説は末永く語り継がれているのである。

・第四陣地の喜劇
これは、「前方警戒を怠った部隊を完全な待ち伏せ攻撃で壊滅させ、ほうほうの態で逃げて行った連中がその足で我々のフラッグを取ったと喜んでいたら実は自軍の旗が取られていた」というなんとも2重3重におもしろおかしい一戦をその場に立ち会った者達が後世「第四陣地の喜劇」として呼び交わしたものである。
猶ここではその伝説の一戦を記録する事が目的であり、「誰」という要素を取り上げるのが目的ではないので我が軍以外はすべて仮名又は名前を伏せてある事をご了承頂きたい。

昔々、人参軍がまだ自前フィールドなしに各地を転戦していた時代の事じゃ。
その日ゲームが行われたフィールドは、フラッグを設置する第一・第二地点の他に、防御拠点として使ったりする第三・第四陣地と呼ばれる塹壕もあったのじゃ。
この日は、いつも疾風の様に戦場を疾駆する若手チーム「K」が休場という事もあってゲームは比較的刺激に乏しかった。
特にこの日珍しく人参軍と同じグループになった「ドラゴンフライ(仮名)」には新人も多く、地形に不慣れな事もあって広大なフィールドの全体を生かしたとはいえない展開を続けていたように感じた紅中兵主席は、ふとかつて自らも汗水たらして掘り上げた第四陣地と呼ばれる塹壕の事を思い出した。
この数ヶ月の間、相次ぐ壕内浸水などでほとんど使用されていなかったが、元々眺めの良い谷に面した斜面に構築しただけあってそこからの眺めは格別なものがあった・・・
しかし、ドラゴンフライ(仮名)ではほとんどの者が入った事がないという。
かくして首領様の腹は決まったのだ。「よし、我等労働の成果たるあそこからの絶景を見せてやろう。」と。

ゲームはいつも通りのフラッグ戦、人参軍・ドラゴンフライ(仮名)及びチーム「T」からなるグループはフィールド奥にある第二地点からスタートのターンであった。
フラッグ前の広場で作戦会議の席上、偉大なる領導者同志は高らかにこう告げた。
「我々人民兵※はちょっと考えがあるので谷側に迂回する。戦力として期待しないでね」
それでは、という事で部隊長達は即座に戦法を打ち合わせる。
かくして親愛なる領首様率いる人民服部隊は遠足としゃれ込む事になった。
(※面白い事に、この日人民服で来た人参軍メンバーは主席だけ。ただしドラゴンフライ(仮名)のうち5名が人民服装備だったので臨時に人民兵集団を形成したのである)

ホイッスルが響き、ゲームが始まった。
同志主席は先陣きって斜面を駆け下りながら、同志達を叱咤する。
「急げ、谷に敵が現れたら全ておしまいだゾ!」
確かに当日は高機動型チーム「K」こそいなかったが、それでも敵グループ側に谷方面への迂回を試みる者がいるかも知れない。彼らがもし急激に接近して我々の移動を察知しては、両フラッグへの道に関係のないフィールドはずれの第四陣地など一瞥もされる事無く遠巻きに迂回されてしまうので、絶対に見つかってはならないのだ。
若手が中心だった所為か遅れて銃殺された者もなく、足をもつれさせながらも全員壕周辺に到達する事が出来た。
皆全力疾走して来たのでゼイゼイ肩で息をしている。
とはいえ、今は戦闘続行中なのだ。百戦百勝の鋼鉄の霊将は直ちに布陣を命じた。
「壕右翼に2名伏兵!志願者は!」「はっ!」
即座に声が返って来た。たたみ掛けるように指示を出す。
「この壕の弱点は側面からの攻撃だ。同志諸君は発見される限界まで埋伏し、確実に敵を討て!」「承知しました!」
要地に配兵を終え、準備射撃も完了する頃、皆の呼吸も落ち着いてきた。
「うわーこれはいい眺めですね」「これなら谷からの攻撃は絶対撃退できるぞ!」
「確かに谷底を進んでくるなら、ね。でも敵もバカじゃないから、そんな事はまずないよ。」
そんな会話を交わしていると、第1地点方面から絵に書いた様な縦一列で歩いてくる集団が出現した。
しかも谷底の正にド真ん中を、かがみもせずに進んでくる。
こちらから見える、という事は向こうからも見える筈である。
「同志諸君、動くと却って目立つ。こうなったら壕から出ている部分は決して動かすなヨ」
押し殺した声による指示が、全体の動きを制する。
敵集団は相変わらず無警戒に進んでくる。これは充分引き付けて殲滅してやるべきだろう。
若き同志達に花を持たせる折角の機会だと判断した、限りなく温情溢れる伝説の将軍は、すぐ右隣にいる政治将校に言った。
「同志の発砲を開始合図に一斉射撃だ。タイミングは君が決めたまえ」
だが彼はこれまでデスクワークが長かった所為でこういった機会に慣れていないから、と固辞、止む無く大将軍様のモーゼルミリタリーが信号拳銃の役を務める事となった。
敵はまさかと思っているのか、全く周辺を警戒する風もなくまるでゲーム後にセーフティーに帰る集団の様に接近してくる。
(この時、この一列縦隊の中には敵影発見を告げた者もいたが、指揮官の指示は「そのまま前進」だったそうだ)
アンブッシュで効果的打撃を与える為には少なくとも側面、出来たらやり過ごして後面を晒した所を叩くのが戦闘の常道というものだ。
ピリピリとした緊張の中、壕内の総員が蝋人形にでもなったかの様にじっと敵を凝視しつつその機会を待つ。
と、敵がまだ側面を晒すにも至らない地点で谷の向こう斜面へと方向転換を始めた。
斜面が緩く上りやすい所から谷を登って中央通路に出、第二地点のフラッグを目指そうという魂胆だ。
確実に全滅させるにはもっと引き付けねばならないが、待っているとそのまま射程距離外へと遠ざかってしまう。正しく決断の一瞬!
ポッポポポ・・・「撃てイ!」
トリガーを引くと同時に号令が響く。
AKが、MP5が、これを食らえとばかりに轟音を響かせてBB弾を吐き出す。
突然一斉射撃を受けた敵兵はよっぽど驚いたのか、手近な地形に伏せたりという通常の反応をせず、そのまま背中を向けて斜面へと一目散に逃げ出した。しかし地盤が悪いらしくヤケにのそのそとうごめいている。こうなっては射的大会だ。
3人、4人、5人・・・面白い様に一方的に、敵は次々と死んでいった。

 後日談:この時敵サイドにいた者の話では、敵指揮官は1連射を受けた後「軽機※はおるかー!」と叫び、返事が無いと「長射程の者」「ホップ銃は」と再三繰り返し、「これならホップ入ってますが」と一隊員がコッキング拳銃を指したのを聞いてこの時初めて自分達には届かないと認識、「散開して各個に応戦」と下令すると自らは逃げ出した。
もちろん、このもたつきで彼が逃げ出す頃には部隊の大半は既に失われており、また自分達には射程外な事は彼の「軽機」発言から明白な訳だから、生き残った誰も敢えて無駄と承知の反撃などしようとはしなかったそうだ。
(※機関銃・狙撃銃またはコッキング以外はホップを切るというルールだった為。
勿論第四陣地側の人間も全員ホップは切ってあるのだが元々高低差がある上に事前の準備射撃で当たりを付けてあった為、こちらの弾は確実に届くが敵の弾はまるで射程外という差が生じた)

この時、掃射による戦死を逃れたごく僅かな敵兵のうちの2名は壕のある側の斜面に向けて走り、斜面を登って側面から第四陣地を襲おうとした。
しかしそこには先ほどの命に従ってこの時まで射撃を控えていた伏兵が待っていた。そして・・・
機を得た同志達の猛射の前に、さしもの勇敢なる彼らもあえなく壊滅した。(合掌)

激しい銃撃にも関わらずかろうじて生き残った2〜3名が、「幻の野生動物の映像」みたいにのそのそと斜面にかじり付きよじ登りながら視界から消えようとしている。
が、ここで銃撃が沈静化した。
「どうした!敵が逃げるぞ!有り弾叩きこんでやれ!」
直ちに答が返ってくる。「弾詰まりです」「弾切れです」「右に同じ!」
更には歴戦のモーゼルM712すら、低気温化の連射でGガスが冷えきってしまいトリガーは引きっぱなしなのだが全く射撃不能となっていた。
ここで機動予備を繰り出して追撃すれば間違い無く敵を全滅されられる。しかし惜しいかな、追撃に当れる兵力の余裕はなかったのだ・・・
弾切れメンツ達が相次いで予備弾補充を完了した。敵は相変わらずのそのそと斜面にかじりついているのは見えるものの既に直接照準の射程外だが、ただ逃がすのは惜しいと思った数名が45度射撃を試みる。無理とは思うが、まあ焦った敵がポカをやってくれるかもしれない。少なくとも、普段「組織戦闘」を口グセにしていた敵指揮官のその割に情けない指揮ぶりへの葬送曲の代わり位にはなるか。
「すごい大成功でしたね!」「こんなにもうまく行くとは!」「いやあ良い気分!」
全滅こそさせられなかったが予想外の大戦果に同志達は口々に快哉を叫んでいる。
そう、確かに通常のゲームでこれだけの圧勝は本当に珍しい。
勿論総指揮をとった主席は全滅に追い込めなかった無念と、戦果は多分に敵の失策によるものである事を承知していたが。

暫くして、第二地点(我々のフラッグ)方面から「突撃」と言ったらしい濁声が大音響で聞こえて来た。
「何か言ってるよ」というので聞いていると、次に「何とかカントか、万歳万歳」とまたも濁声大音量の万歳三唱が聞こえて来た。
どうやらフラッグは取られたか。まあ我々はハナからフラッグは捨てていたし、ここ(第4陣地)では期待以上の戦果が挙げられたからその位はくれてやっても構わないな、と皆がフラッグ陥落をさして気にも留めず話し始めた時、第一地点の方向から終了を告げるホイッスルが鳴った。
第二地点から勝鬨が聞こえた直後で、やけにタイミングが良かった※のだがその時は不思議にも思わなかった。
(※このフィールドはかなり広く、ホイッスルなら両フラッグ間でもなんとか聞えるが人の声ではどんなに大声の人でもまず何を言ってるかまではわからない。その為開始と終了は必ずホイッスルを合図にしていた)

「さあ終わりだ終わりだ」と寧ろ我々の挙げた戦果の方に興奮醒めやらぬ皆が陣地を出てセーフティーに向かう。
口々に「待ち伏せ大勝利」の話をしながら意気揚々とセーフティーに帰り着くと、人参軍側だった人達が「勝ったね」と言っている。
「???だってあの・・・」
タムロっていた数名のうちの一人が事情を語ってくれた。
「ああ万歳三唱でしょ。その前にこっちが落ちてたんだよ」ぶっきらぼうな言い方は敵兵だからか。
やがて判明した顛末はこうだ。
第四陣地迂回組(人民兵団)以外の人参軍グループ本隊は両フラッグのちょうど中央あたりで敵主力(谷に降りてきたのは別動隊だった)と真っ向からぶつかり合った。そこで人参軍グループ本隊の指揮官は自分の手勢からさらに数名を強襲班として出し、自分達が敵主力を引きつけている間に敵フラッグを奪取させる事にした。
この作戦が功を奏し、中央の本隊はベテラン揃いのチーム「C」・「D」等からなる強力な敵主力を押え込み、その間に迂回部隊が第一地点フラッグ到達に成功!この戦いを勝利に終わらせたのだそうだ。
ただ、敵の守備隊もあまりいなかった為、勝利を決めたは良いがその場にいた誰もが終了合図を出す為のホイッスルを持っておらず、そこでホイッスルのある人が来るまで「終わ〜り〜」と叫びながらもたついていたという。
つまり、敵別動隊指揮官は、突撃だバンザイだと大騒ぎしていたが結局ヌカ喜びだったのである。

かくしてこの一戦は「第四陣地の喜劇」と呼ばれ、「ドーハの悲劇」にも匹敵する位有名になった(定例戦常連の間では、ネ)。

・1>19、叙勲は伊達じゃない
我が軍屈指の戦士、若同志にまつわる伝説。
彼が防府出向の直前、お別れのゲームが催された。当然そういう人は「主役」だから、フォックスとして「狐狩り戦」で存分にBB弾を浴びて浮き世の垢を払い落としてもらうのはどこのチームでもデフォルトだと思う。
普通だとこういうシチュエーションてのは、フォックス側が絶対不利と思うだろう。ましてこの時の人数差は19対1。
しかし、彼はその辺に幾らもいるゲーマーではなかった。そう、武勲によって叙勲された最強の人参兵だったのだ・・・

ゲーム開始を待つ数分の間、こんな会話が交わされた。
「彼のことだから間近に潜んでいて、開始と同時に撃ち込んでくるとかやりそうだね」
「彼ならあり得るね」
これが伝え伝わるうち、いつの間にか
「彼がすぐ近くに潜んでいて、開始と同時に乱射しながら突っ込んでくる」
「我々は開始と同時に皆殺しだ」
という形となって広がってしまった。
普通の相手なら「出来る訳ないじゃん」と一笑に付す様な話だが、なまじ相手が若同志だっただけに、皆十分あり得る事だと思ってしまった。
かくして彼はゲーム開始前、既に数多のハンターに恐怖を与え、ゲーム開始のホイッスルが鳴ったと同時に19人の狩人達は遮蔽物を求めて一斉に逃げ散ったのだった。
勿論これが単なる噂だけに終わらなかった証拠に、この日は若同志フォックス戦を2回行ったのだがいずれの回も生存出来たハンターは全体の半数以下であった事をお伝えしておこう。

・伝説のM93R
我が軍の奈良同志がいつもの様にフラッグ守備の任についていた時の事。
ご存知の様に狙撃銃というのは敵射程外からじわじわと倒すのには適しているが、多数の敵に接近されてしまうと歯が立たない。ましてAK改造ドラグノフはフルオートもセレクト出来るのだが我等が奈良同志は「狙撃銃はセミ」を信条としているので使わないと来ている。
そんなこんなでサイドアームの選択に苦慮し、一時はマルゼンのウージーピストル等を下げていた事もあった彼はこの日、行き付けのショップのオヤジに薦められたマルゼンのベレッタM93Rを配備したばかりであった。
この時、本隊は全て出払ってしまい若同志と2人だけで周辺警戒にあたっていたところに4名からなるチームが全員による一斉フラッグ突撃をかけて来た。
彼は瞬時に判断し、93Rを抜いた。真っ直ぐ突っ込んでくる敵兵を60発の弾丸が迎え撃つ。
気がついた若同志も援護射撃を行い、彼等の突撃は敢無く潰え去った。
我が軍の規定では複数人が同一目標に射撃を行いゲットした場合で、誰の弾が決め手か不明な場合は各々が自分の戦果として良い事になっている。また状況的にもフラッグ側にいた彼にまっすぐ突進してきた為、仮に若同志がいなかったとしても彼一人で十分対処可能であったと認められた。その為奈良同志はその拳銃一丁で4名をゲットと認定された。

これが伝わるうちに「奈良さんがM93Rで4人(1チーム)を全滅させ、アタックを阻止した」「93Rは1チーム丸ごと全滅も可能な凄い拳銃らしい」となって行き、いつの頃からか「マルゼンの93Rは×××(チーム名)を壊滅させた栄光の機関拳銃」として瞬く間にこの93R伝説は広まっていった。この伝説を伝え聞いたゲーマーの多くは自分も彼の功績にあやかりたいと願い、「マルゼンの」M93Rを求めてショップに走ったと言われている。



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